どうやら先ほどルルーシュが遠隔操作していた列車には軍の予備ナイトメアが乗っていたらしく、それに乗り私の指示に従え、みたいなことをルルーシュが言っている間、私は周囲の機器をチェックしていた。
(つーか、マジでゲーセンのままだな、これ・・・・・・・・)
流石に細部は違うけれど、大まかなつくりは全く同じらしいと、少し前の操縦で判明。
(初心者用オールマイティパターンのデータ、だな)
ゲーセンの物は自分用データを有料で作れば、徐々にカスタマイズできるやつだった。
で、勿論そのデータを持たない人用でいくつかの基礎パターンがあったわけだけど、この今乗ってるナイトメアはその基礎パターンの中でもっとも使いやすい、初心者用のそれ。
(このデータは最初数回使用して以来だから、完全に操るにはも少し時間をかけて感を思い出さないと・・・・)
でもそんな時間があるとは思えない。
(となると、激しい戦闘は無理だな。てか、ルルーシュいる状態じゃぁ、どっちにせよ全力は無理か・・・)
「・・・・意外と疲れる・・・・」
ため息と同時に、私の胸に背をくっつけてきたルルーシュにどっきんこ
(悦)。
私の思考はその瞬間現実へと引き戻され、相当分厚く被っているはずの猫がごそっと剥がれるのをあわてて戻す。
顔面には苦笑を浮かべ
(内心はもちろん大荒れ)、疲れた様子のルルーシュの頭をいたわるように撫で
(ワオ、想像以上に肌触りいいんだけど!)たら・・・・・
「っ、すまない!!」
顔を真っ赤にして離れていかれました。
あらなにこの子。
もしかして私が後ろにいたこと忘れて気を抜いたの?
あらあらまぁまぁ・・・・・・・・(微笑)
「・・・
(むきむきの)胸ならばいつでも貸そう。初陣は・・・・やはり疲れたか」
「う・・・・・あ、ああ・・・・・」
「・・・・・・・・・今はまだ、貴殿は誰の命も奪っていない。引き返すのならば、これが最後のチャンスだぞ」
「・・・・・ここまできて、放り投げるなんて論外だ。やり遂げる決意なら、ある。」
「そうか・・・・・・」
まぁ、最初から分かってたけどね。
「それはそうと、次、私はどう行動すればいいのかな?」
「最善はもう一機ナイトメアを用意して背後からの強襲だが、現状ではレジスタンスの連中のみでも十分可能・・・・・ならば無線機の予備もない今、最悪を想定してユージンにはこのまま・・・・負担をかけるが、俺の足になってもらいたい」
「了解した」
「それと・・・・」
「?」
「ルルーシュでいい。敬称もいらない。」
「それは・・・・・・
(え、ちょ、まて、は、鼻血が・・・・・・!!)」
「駄目か・・・・・・・?」
「
(ぬっふぅわぁああああああっ!!!)・・・・・・わかったよ、ルルーシュ」
「・・・・・!!」
も、ちょ、この子、
もって帰っていい!?
呼び捨てにしたとたん頬染めて斜め下に視線をやる姿とか、何この色気!?
(ふぉぉおぉおぉおおおおっ、お、落ち着け私!!ルルーシュは男の子!私も一応男の子!)
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、なんだこの、空気。
頬を染めて俯く美少年
(儚い系)と、いつになく照れてる美青年
(私☆)が超密着中の密室。
くそぅっ
第三者視点からこれ見てみたかったっっ!!
ぴぴっ
びくぅっ×2
変な空気だったのを唐突に終わらせたのは、作戦開始を知らせるアラーム音。
そういえば先ほどルルーシュがセットしてたっけと思っていれば、当の本人は無線機片手に指示を飛ばしてる。
「P1、動かせるか?基本は今までのと変わらないはずだ」
声だけ聞けば、しっかりと平静を保っているように聞こえる。
けれど、髪の隙間からのぞく耳はまだ赤い。
でもそれを指摘するつもりはまったくなく、ただ私は後ろから彼の姿を見守るのみ。
そしてしばらく言葉のやり取りの後、ついに作戦は始まった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「R2、アンカー発射。P7、UN弾を。Nグループはそのまま前進。」
先ほどの戸惑いをきれいに消し去り、淡々と指令を飛ばしていくルルーシュ。
とりあえず私の出番はまだないと判断し、敵影が映し出されたモニターを眺めることに。
「さて、敵の選択肢は5つ・・・・・」
そうルルーシュがつぶやくと同時に、敵影の陣形が見るからに崩れていくのが見て取れた。
(おいおい、なんだこれ・・・。素人の私でも分かる、穴だらけの陣じゃないか・・・・)
ちなみに戦略はゲームで覚えました☆
「何だ、最も愚かな手を打ったな」
呆れた声に反応してクスリと笑みを零せば、ルルーシュが僅かに振り向き同意の首肯を。
「Q1、地図は正しいんだな?」
『ああ、旧市街は。しかし現物も見ずに・・・・』
「十分」
こんどは先ほどとは違う視線を向けられ、そこに含まれる意味を理解したと頷けば、再び前へと向き直り、
「ミッションナンバー3・・・・・・・・・・準備はいいな?」
不適な笑みを浮かべそう告げるや否や、わずかな間を置き、モニターからいくつもの機影がロストした。
「チェックだ」
「お見事」
思わず賞賛の言葉を零せば、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「・・・
(あれ、なんか忘れてる気が・・・・・)」
「思っていたより、やれる・・・・!」
「
(何だっけ・・・まぁ、とりあえず)気は抜くなよ」
「っ、勿論だ!」
初めての戦闘でうまくいき、高揚してるのは分かる。
けど、今までの経験上、そういうときに思わぬ落とし穴が待っていると、いらんことに私は知っている。
だから注意も込めてそう言えば、喜んでいた自分を恥じるように表情を取り繕うルルーシュ。
「ここまでくればもう一押しだ。そうすれば検問が崩せる」
『こちらBグループ!敵兵を確認!』
「増援か?やはり実践は違うな・・・・・状況は?」
『全員脱出はしたが、4機があっという間に!』
「敵の数は?」
『一機だよ、一機!』
「えっ?」
(あー、あー、思い出した。ここあれだ、ウザ・・・スザクの)
『新型じゃないのか?初めて見るタイ・・・うわーっ!』
「っおい、どうした・・・!」
「・・・・・聞いたことがある。確か、現在新型の試作機が製作中だと・・・」
「新型っ?」
なんて、思い出したことをそれとなく伝えれば、思考するルルーシュ。
その間にも味方機が次々やられていく音が無線機越しに届き、その新型がどれほど高性能なのかが伝わってきた。
「・・・なぜ、試作機を今投入する・・・」
「第二皇子直属の機関ゆえ、実践に使うのは難しかった、と」
「ふむ・・・・・」
「しかもその機体は相当高性能ゆえ、乗りこなせる操縦者がいなかったとか・・・・」
「・・・・なんだ、それは・・・・」
呆れた様子のルルーシュだけど、その頭は現在作戦を練り直しているのだろう。
顎に手を当て思案するその様子は、存外落ち着いている。
『おい、どーなってんだよこいつ!どうすれば・・・・』
相当に焦った声が聞こえてきたけど、すぐに雑音にかき消された。
「出撃するか?」
「・・・・どうにかなりそうか?」
「対峙してみない限りどうとも」
「・・・・っく」
「どちらにせよ、戦闘は免れない。ルルーシュ」
「・・・なんだ」
「しっかり、掴まっていろ」
「え、・・・ぅわっ!」
しょうがない。
どうなるか分からないけど、どうにかしようじゃないか。
いざとなればルルーシュ抱えて、生身で逃げ出せばいい。
片腕をルルーシュの腹部に回し、もう片方の手で操縦かんを操りナイトメアを起動。
潜んでいたビルから飛び降りれば、前方に見たことのある機体が一機。
「手を離す。しっかり掴まっていろよ。じゃないと振り落とされるから」
「っ、任せた!」
「ああっ」
狭いコクピットの中、操縦者の邪魔になりにくく掴まれるとこなんて、そんなにない。
んで、案の定私の背に腕を回し、上半身のみ向かい合う形で抱きついてきたルルーシュ。
今は緊急事態!
と強く念じ、煩悩を今ばかり完全封印。
ペダルを踏み込み、私の存在に同じく気づいたウザ・・・・スザクへと突進をかければ、強烈なGが。
「っ」
やはりルルーシュにはきつかったらしく息をつめるのが聞こえてきたけれど、僅かに合った視線は気にするな、と言っていた。
(短時間で、どうにかしないとな)
高校時代、鍛え上げた腕をナメルナヨ(微笑)
迫ってきたスラッシュハーケンを見切って交わし、迫る腕は蹴り上げ回避。
と、同時に背後から迫るハーケンを掴み、その間を隙と見たウザクは蹴りを繰り出してくるけど、残念ながら想定内。
バックステップでかわし、すぐさま手に持ったハーケンのワイヤーを目前の足へと巻きつければ。
(はっ、だっせぇ!)
無様にも倒れこむウザク。
「・・・すごい」
「機体の性能が生かされてないな・・・」
なんてかっこつけて言ってみるけど、内心実は結構緊張してます。
だって、ゲームで同じようなのやったことあるけど、やっぱり実践は違う。
本物の緊張感があり、補正もきかない。
たとえば・・・・
「・・・・・・この機体も、これ以上はきついな」
私のとった動きは、この期待が持てるスペックを軽く上回ってしまったらしい。
あちらこちらから、起動限界のアラームが聞こえてきた。
「・・・・ルルーシュ、ここはいったん引く」
「・・・それが最善か」
いまだワイヤーが絡まり動けないウザクを放置し、限界を訴える機体を反転。
少し行った先で路地へと入り込み、下手に追いかけてこられないよう、もう足手まといでしかない機体を乗り捨て、ルルーシュを腕に抱いたままその場から姿を消した。
「・・・・・・・最後に、G1ベースへ行ってくれ」
「
(それどこっすか・・・・・・ああ、敵のいる中心地か)了解」
さくさくっと圧倒。
ちなみにBLはありません。
たぶん。